メインコンテンツに飛ぶ
Pegaによるマガジン

We'd prefer it if you saw us at our best.

Pega.com is not optimized for Internet Explorer. For the optimal experience, please use:

Close Deprecation Notice
Clay Richardson
クレイ・リチャードソン(Clay Richardson)
Digital FastForward、CEO兼チーフエクセラレーター
3分で読めます

デザイン思考がもたらす真のROI:創造性の発揮

この問題解決方法によって、誰もが企業改革に力を発揮できるようになります。
シェアする Share via x Share via LinkedIn Copying...

数年前、ある大手ペットフードメーカーは、犬の肥満という問題を抱えていました。 多くの飼い主が、愛犬にこのメーカーのフードを知らないうちに与え過ぎていたのです。主な理由は、与えるべき適切な量がわからないことでした。 このため、不満を感じた飼い主は、他社製のダイエット用ドッグフードに目を向けるようになりました。 このメーカーは、他社に利益を奪われないようにすることを目標に据えました。

目標を達成するため、同社の研究開発者はテクノロジーを利用することにしました。 犬種や犬の体重に応じて与える量を正確に計量できるデジタルフードスクーパーを設計したのです。 天才的な発想です。 ところが、実機でテストしてみると、技術的には「使える」ものでも、飼い主にとっては「使えない」ことがわかりました。 結局、餌を与え過ぎてしまうのです。 大量の研究開発費と時間を浪費してから、研究開発者は別のアプローチ、つまりデザイン思考を試みることにしました。

「デザイン思考とは、探索、実験、創造的な解決策を積み重ねることで、チームが問題を解決できるようになるという方法論です」


デザイン思考とは、探索、実験、創造的な解決策を積み重ねることで、チームが問題を解決できるようになるという方法論です。 ビジネスにおける創造性といえば、一部の従業員や専門職だけが持つものと思われがちですが、デザイン思考なら誰もが創造力を発揮できます。 経営幹部からコールセンター担当者まであらゆるステークホルダーが創造力を発揮できる、段階的なプロセスなのです。

ここからは、その仕組みと可能性の活用についてご説明したいと思います。 一般的には、問題や課題が見つかると、直ちに解決策を提示しがちです。 「こんな方法がある」、あるいは技術革新が著しい現代なら「こんな効果的なツールや機器がある」などと考えます。

ネズミ捕りを改良しようとするのが人間の性なのです。 しかし、ネズミ捕りの古さが問題ではないのだとしたらどうでしょう? もし、ネズミそのものだとしたら、または散らかったキッチンカウンターがネズミを引き寄せているとしたら、あるいはまったく別の原因だとしたら。 デザイン思考は、次の4つの共同作業を通じて、顧客とその問題点を理解し、共感することを中心に問題を解決していきます。

観察:顧客の「問題」について尋ねることはしません。その代わり、顧客が通常、その問題にどう対処しているかを観察します。 この作業の目的は、顧客の立場に身を置き、顧客目線で問題を探ることです。

共感:次に、問題点とプロセスのペルソナマップ(共感マップ)を作成します。 目標は、当初の仮定よりも踏み込んで、問題を形成している深層の感情に目を向けることです。 次に、上位4~5個の観察事項に優先順位を付けます。

ブレインストーミング:次に、短時間(10~15分)で、10個単位ではなく100個単位で解決策を思い浮かべます。 私自身のチームでは、「このセッションではアイデアに対する批判をしない」という基本ルールを設定しています。 出されたアイデアが荒唐無稽に思えても気にしないでください。 実行可能かどうかを考える必要もありません。 重要なのは数です。

実験:最も実現可能性の高い1~2つのアイデアに絞って投票し、それを使って実験します。 このテストに1時間以上、100ドル以上はかけないでください。 つまり、100万ドルのハイテク試作品を作ったり、6か月間フォーカスグループを設置したりしてはならないということです。 新しくテストしたアイデアは、早く顧客に提案してください。 うまくいかなければ、改案して再提出するか、次善案へ移りましょう。

先ほどのペットフードメーカーがこのプロセスを試したところ、チームの創造力を高めることができました。 チームは犬ではなく飼い主を中心に問題を検討しました。すると、飼い主は、飼い犬が喜ぶ様子を見たいがために、多めに餌を与える傾向があるという観察結果が得られたのです。 尻尾を盛大に振り回す姿。 子犬のように輝く目。 もう、おわかりいただけましたね。 渾身の「大好き」が満たすものは飼い主の欲求であって、犬の栄養面の要求ではないのです。

そこで、同社の研究開発チームは、これまでとは違うアプローチを試すことにしました。 その結果、ペットのライフサイクルを軸に、飼い主の行動変容に焦点を当てたライフサイクルプログラムを開発しました。 このペットフードメーカーは、競合他社のような低カロリーフードではなく、食事を含むライフスタイルの管理を通じて飼い主がペットに対する愛情を表現できる総合的な戦略を提供する会社として、賢く差別化することができました。

「どの業界や企業でも、いたるところで修正案、特にツールありきの解決策や技術的な解決策に手を伸ばしがちです 」


どの業界や企業でも、いたるところで修正案、特にツールありきの解決策や技術的な解決策に手を伸ばしがちです。 現在のコールセンターには、AIとオートメーションが導入されています。 顧客満足度が低迷したら、実際の顧客の話も聞かずに、旧式のCRMを処分して新しいCRMを導入することにしようと考えるかもしれません。

デザイン思考を利用すれば、顧客の立場になって考え、不満の根源にある感情に気づくことができるようになります。 顧客は多くの場合、サービス担当者の対応が機械的で、自分が助けを求めている人間ではなく、処理すべきタスクとして扱われているように感じることから、不満に思っているのです。 私はこのことを、顧客との関係を構築する斬新な方法を考えたクライアントから、有意義な形で学びました。 それはありふれた会話のきっかけ、「天気」でした。

クライアントのアイデアは、カスタマーサービスに電話をかけてきた顧客ごとに、CRMがその地域の天気を表示し、コールサービス担当者に電話口で顧客に伝えてもらうというものでした。 これをテストするにあたって、クライアントは既存のCRMへの組み込みを見送りました。コーディングに2~3週間かかる可能性があったからです。 その代わり、低忠実度プロトタイプとして、天気予報サイトへのリンクを表示することにしました。

顧客から電話がかかってくると、担当者はご機嫌伺いを兼ねて、天気予報のホームページを見ながら「フロリダは22度、晴れていますね」と話しかけます。 すると、顧客は「ええ、この3日間、いいお天気ですよ」などと乗ってきます。1週間のテストでは、顧客満足度が著しく上昇しました。1行のコードも書かずにです。

これがデザイン思考という方法論の優れた点です。 ガジェットありきのアプローチではありません。 また、影響のないアイデアというものはありません。つまり、失敗する可能性はあるいうことです。 しかし、失敗する自由があるからこそ、既成概念にとらわれない解決策を考えようという意欲も湧いてくるのです。 これこそが、デザイン思考のもたらす真の投資対効果(ROI)です。試行錯誤や失敗を重ねながらも挑戦を繰り返し、効果的な創造性の高いソリューションを導き出すチャンスなのです。

シェアする Share via x Share via LinkedIn Copying...