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AI gets personal
Paul Gary
ポール・ゲイリー(Paul Gary)
著者
5分で読めます

AIを活用したパーソナライズ

マーケティング担当者は自分自身のニーズではなく、お客様のニーズについて考える方法を知る必要があります。 Verizon は、AI を活用してこれを大規模に行い、目覚ましい成果を出しています。
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「突然ですが、 腕時計を買いませんか?」 

これは現在でも多くの企業が顧客に近づく際に使用している方法だと、Verizon Business Groupのマーケティングテクノロジーストラテジストのトミ・マーサンズ(Tommi Marsans)は説明します。 このような近づき方は、製品やサービスを売り込むことのみを考えた一昔前の戦略で、 それぞれの顧客のニーズや希望に対する配慮は一切ありません。 これではうまくいかないということを、マーサンズは理解しています。 

実体験として痛感しているからです。 Verizonも多くの企業と同じく、長年このようなアプローチを行ってきたからです。 マーケティングチームがメッセージングを調整するために使用していたペルソナやセグメンテーションでさえ、効果がないことが証明されています。 

デジタルマーケティングで高い精度を確保できる現在、こうした一昔前の方法はまったく役に立ちません。 「アナログ世界ではこれが限界なのです。 たとえば、顧客のグループ分けをして、それぞれ『教育ママ』とか『ワイン好き』のような名前をつけたでしょう」。そもそも顧客を「教育ママ」と分類するのは問題がありそうですし、問題がなかったとしても有益な分析にはなっていません。

AIによる救済

現在、Verizonは全社的な行動指針を掲げており、顧客を中心に据え、マーケティングメールからオンラインのセルフサービスポータルに至る顧客対応すべてをパーソナライズすることに重点を置いています。 同社は、この実行に人工知能(AI)を活用しています。

AIはマーケティング分野においてはまだ比較的新しい存在ですが、その利用は広がっています。 AIは画像や音声の識別など人間が得意とするようなパターン認識に優れています。 この認識には、膨大な過去の例の分析によって構築された統計モデルを使用します。 

マーケティング担当者はAIを使用することで、顧客データ内のパターンを見つけることもできます。 AIが顧客行動を分析し、得られたインサイトを活用して、自動意思決定を行うのです。 これにより、顧客が期待するような丁寧なエクスペリエンスを提供してカスタマージャーニーを改善できます。さらに、投資収益率も高めることができます。 

昨年のGartnerの調査では、デジタルマーケティングの責任者の84%が、顧客にリアルタイムでパーソナライズされたエクスペリエンスを提供するうえでAIが役立つだろうと回答しました。 また、63%は顧客対応のパーソナライズに苦戦しており、現実的にAIの活用を考えています。しかし実際にAIを導入済みなのは、わずか17%でした。 アメリカ・マーケティング協会(American Marketing Association)がAIに関する報告書で述べているように、「取り組みが行き詰まるのも当然」です。

確かにAIは、顧客のプロフィール、以前の購入履歴、さまざまなチャネルでの過去のやり取りなどからデータを引き出すなど、高いスキルを必要としない作業を学習するのに最も適しています。 人間と違い、その作業をリアルタイムで大量にこなします。

AIの実用化

マーサンズは、自分のチームやVerizonの顧客がこの行き詰まりに陥らないようにしようと決意しました。 そして3年前、基本的なAIの仕組みについて学んだ後、チームのための機能を構築し始めました。 

「概念としては難しくはありませんでした」と彼女は言います。 確かにAIは、顧客のプロフィール、以前の購入履歴、さまざまなチャネルでの過去のやり取りなどからデータを引き出すなど、高いスキルを必要としない作業を学習するのに最も適しています。 人間と違い、その作業をリアルタイムで大量にこなし、顧客の行動や意図を正確に予測します。 

「この予測分析こそ私が非常に魅力を感じた部分でした。 AIは顧客が以前に取った4つ、5つの行動に基づき、6つ目、7つ目、8つ目の行動をかなり正確に予測できるのです。 私たちにとっても顧客にとってもこれは極めて役立ちます」。

AIの仕組み

ここで、AIがどのようなことをしているのか詳しく見てみましょう。 たとえば、あなたがVerizonの顧客で、15本の電話回線を持っているにもかかわらず、そのうちの5つは使用していないとします。 その場合、セルフサービスポータルにログインしてキャンセルをすることになるでしょう。 

ログインすると、使用されていない5つの回線があることを知っているAIが、それらを別の目的で使用する方法を提案します。 あなたはそれを無視してそのまま解約手続に進むかもしれません。 するとAIは、それらの回線に法人向けの無線インターネットサービスを設定することで20%の割引が適用されることを提案します。 「AIは顧客にさらなる価値と可能性を創出しているのです」とマーサンズは語ります。 

一方で彼女は、10年前にはこのような機械による提案を多くの人が煩わしいと考えていたことも認めています。 しかし現在では、スマートフォンが友だちで、その中のアプリが仕事の右腕になっています。 誰もが機械を使いこなして、機械を好きになっています。 

AIの性能が向上していることも助けになっています。 Verizonには3,000を超える複雑な製品とサービスのポートフォリオがあります。 「営業担当者が記憶できるのは、そのうち7つのみです」とマーサンズは説明します。 一方、AIはそのすべてを記憶できるので、より役立つ提案ができます。 

すべてのデータにアクセスできることで、顧客への提案の一貫性も高まります。 Verizonの以前のメッセージングは、チャネルによって異なるものでした。 「1つ目のオファーはメールで届き、2つめの別のオファーがポータルで表示され、3つ目のさらに異なるオファーが営業担当者から届くということが起こり得ました。 それらをつなぐエコシステムが存在しなかったからです」とマーサンズは語ります。 

コンバージョン率は改善しましたが、顧客のためにより多くの価値を創出することで、さらなる向上を目指したいと彼女は考えています。 「顧客に特定の行動を強制することはできません。 ある行動を促す唯一の方法は、顧客と親密な関係を築いて価値を創出してあげることです」とマーサンズは言います。 

AIは、顧客とシームレスに対話し、カスタマージャーニーを支援することによってそれを実現します。それ以外の可能性も広がります。 しかし、AIにもできないことは多くあります。 マーサンズは、AIをマーケティングのテクノロジースタックに導入しようと検討しているマーケティング責任者は、このことを必ず念頭に置く必要があると言います。 これは、彼女が実際にAIを導入した経験に基づいています。 

マーサンズは、利益率の高い提案に焦点を当てるよう学習させたあるAIモデルについて振り返ります。 提案されるオファーは、たとえばスマートフォン1機に対して5ドルの割引など、非常に少額でほとんど意味のないものになりました。

そこでマーサンズのチームは軌道修正をし、折衷案といえる設定に切り替えたところ、行き過ぎた状況になってしまったと言います。 「AIは人間が求めていることはわかりません。利益率ではなく量を追及してもらったところ、 とんでもないオファーで安売りをしてしまっていました」 

マーサンズは、AIにあるバイアスを取り入れてしまっていたことに気づきました。 「古い製品中心のバイアスが私たちのモデルに取り込まれてしまっていたのです。 それを少し調整する必要がありました。 AIが得意なのは、人間ができることをより速く行うことです。 一方で判断を下すことは不得意なのです」と彼女は語ります。

AIは顧客のベストフレンド

マーサンズは今後数年間で、AIが顧客に連絡を取り、同社の製品やサービスにさらなる価値を見出してもらえるようになればと考えています。 AIが現在の製品やサービスにおいて不足している部分を特定したり、対象を絞ったオファーを提供したりできるようになれば理想的です。 

それではまるでジョージ・オーウェルが作品で描いた監視管理社会のように感じるかもしれません。しかし、マーサンズは、製品中心から顧客中心の方法に移行していくことが、今後のすべての企業においてゲームチェンジャーになると考えています。 

彼女は次のように締めくくります。「顧客にとって重要で、かつ測定可能なユースケースに焦点を当てるのです。 そうすれば、顧客が正しい方向に導いてくれます」。 
 

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