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John E. Dunn
ジョン・E・ダン(John E. Dunn)
著者
5分で読めます

サードパーティcookieの廃止 次の展開は?

Googleがサードパーティcookieを廃止したことで、業界ではcookieの代わりになるものは何かと不安を募らせています。 その解決には、データイノベーションの新しい波が求められることになるでしょう。
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1994年、Netscape社のエンジニア、ルー・モントゥーリ氏が発明した小さなテキストファイルは、後にデジタル時代を代表する制作物の1つとなりました。 モントゥーリ氏はこれをcookieと名付けました。 ウェブサイトは、ユーザーがアクセスするたびにcookieファイルの1つをそのユーザーのコンピューターに保存します。これにより、アクセスするたびに関連性のない別の事象として扱うのではなく、そのユーザーを記憶できるようになります。

モントゥーリ氏のファーストパーティcookieは、ウェブサイトが言語や場所、ショッピングカートの内容などの個人設定を記憶できるようにすることを重視していました。 しかし、2年後にMicrosoft社のInternet ExplorerがNetscapeからシェアを奪い始める頃には、このツールの変種が登場していました。

サードパーティcookieは、追跡のオプションを1つのウェブサイトの外にまで拡張しました。 このcookieは、誰でも何個でも使用でき、複数のサイトにまたがるユーザーのアクセスを追跡できます。 これにより、企業はユーザーの関心事項を収集し、広告効果を測定し、さらに深層的な行動パターンを特定できるようになりました。

広告主は、サードパーティcookieを利用して、ユーザーの関心をリアルタイムでグラフ化し、規模やデバイスを問わず利用できるようにしました。 ただ、1つ問題がありました。このような情報収集が行われているということが、ユーザーには一切伝えられていなかったのです。

cookieの廃止

それから30年近くが経ち、Googleは、モントゥーリ氏が誤って生み出してしまったプライバシーの問題を解決したいと表明しました。 サードパーティcookieの時代は終焉を迎えています。

2024年(当初予定は2023年後半)、Googleの主力ブラウザーであるChromeは、2019年のプライバシーサンドボックスイニシアチブの一環として、サードパーティcookieのサポートを段階的に廃止していく予定です。 新しいTopics APIは、cookieの代わりに、アクセスしたウェブサイトに応じてユーザーを分類する機械学習システムを採用します。 また、デバイスフィンガープリンティングのような代替のユーザー追跡方法も制約されることになります。

このような動きは必ずしもGoogleが選んだものではありません。 EUの一般データ保護規則(GDPR)やePrivacy指令(ePR)などの相次ぐ規制により、cookieの同意に関する規則が厳格化されています。 EUのcookie法としても知られるePrivacy指令では、ウェブサイトがcookieを表示する前にEU内のユーザーから事前に同意を得ることが義務付けられています。

また、商業的・技術的な面からも圧力がかかっています。 広告ブロッカーや、AppleのSafariやNetscapeの後継のMozilla Firefoxなどの競合ブラウザーがデフォルトでサードパーティcookieをブロックするようになり、マーケティング担当者や広告主はcookieを使用することが難しくなっています。

サードパーティcookieの代替

サードパーティcookieの廃止は、それが生み出したデータマイニングのエコシステムにどのような影響を与えるのでしょうか。 広告プラットフォームプロバイダーであるAdform社の英国カントリーマネージャー、フィリップ・アクトン氏は次のように述べています。「業界内でもかなり意見が分かれています。 大きな試練だと考える人もいれば、残り半分の人は事業活動をクリーンにし、コンプライアンスとユーザーフレンドリーに注力する良い機会と捉えています」

懸念されるのは、Axel Springer社などのドイツの出版社です。 同社は最近、欧州委員会に、Googleによるサードパーティcookieの禁止措置はGoogleの広告に対する支配力を強化し、EU法に違反すると訴えたのです。

アクトン氏は、業界には3つの選択肢があると考えています。 1つ目は現状維持、つまりコンテンツを利用してユーザーの閲覧傾向に応じた広告を配信するというコンテキスチャルデータの既成概念を維持することです。

2つ目は、GoogleのTopicsです。これはそれ自体がコンテキスチャルな概念を改良したものですが、重要な工夫が施されています。 「それはゲートキーパーとして機能するChromeです。 これも、Googleが、改善を進めながらも主導権を握ろうとした試みの一例です」とアクトン氏はいいます。

Googleの方式では、データの品質が制限要因になる可能性があります。 また、「広告キャンペーンで得られるデータは、他の企業や競合他社のデータが集約されている可能性が高くなります」と警告しています。

ファーストパーティデータへの依存

3つ目の選択肢は、企業やパブリッシャーが自ら収集するファーストパーティデータです。これはファーストパーティcookieが暗黙的に収集し、ユーザー自身が明示的に提供します。 このデータはより永続的であり、ユーザーが追跡されることに同意する限り、同意の問題を解決できます。 また、ファーストパーティcookieは、プログラマティック広告用の豊富なデータソースとなります。 Adform社の統計によると、これはすでに欧州諸国におけるサードパーティデータの普及に匹敵するほどになっています。

課題は、パブリッシャーコンソーシアム、確率的ID、認証済みIDなど、ファーストパーティIDの種類が多いことです。 これに対し、Adform社は、自社のFlowプラットフォームに、複数のIDに対応する新機能「ID Fusion」を追加しました。

アクトン氏によれば、Googleにこだわるだけではコストがかかり、その広告フレームワークに頼らざるを得なくなるため、 多角化が重要なのです。 「広告主やテクノロジーパートナーは、ファーストパーティデータを利用することで、Googleに全面的に依存する企業とは異なり、成功を収めることになるでしょう」と同氏は予測します。

広告主やテクノロジーパートナーは、ファーストパーティデータを利用することで、Googleに全面的に依存する企業とは異なり、成功を収めることになるでしょう。

オムニチャネルへの取り組み

データマーケティング企業Kinessoのグローバルソリューション担当副社長であるジャクリーン・レン氏は、ファーストパーティデータが進展であることに同意しながらも、業界はさらに多次元化すべきだと考えています。 これは、モバイル、PC、電話、店舗など複数のチャネルで顧客を一元的に把握するオムニチャネルの概念をサポートするものです。

「最大の課題はコンシューマージャーニーマップの作成です」とレン氏はいいます。 各種チャネルのデータソースを結びつけるものが必要なのです。 「問題は、何をコネクターにするかです」。

サードパーティのトラッカーはこの点で優れており、業界は、サードパーティのトラッカーが存在しなくなった場合に同じ機能を確保するには、ファーストパーティの代替品の利用をさらに進める必要があります。

一方で、規制が想定外の悪影響を及ぼす可能性もあります。

レン氏は次のように述べています。「顧客は権限を高めることができましたが、同時にクローズドプラットフォームも多大な影響力を獲得できました。 Googleが巨大化する一方で、小企業は生き残ることができなくなっています。 これがFacebookの直面している課題です。 今のところ一つのアプリしか持っていません。だからこそ、同社はメタバースに事業転換しているのです」。

AIによる救済

cookieに関する議論に伴うのは、コネクテッドオムニチャネル体験をサポートするAIなどの新しいテクノロジーがもたらす可能性です。 これもGoogleの描く未来像の根幹にあるものです。

英国に本拠を置くプライバシー検索エンジンの新興企業、Mojeek社のCEOであるコリン・ヘイハースト氏は、「当社はトラッキングやプロファイリングに反対する立場です」といいます。 同社は、コンテキスチャルデータを使ってユーザーに広告を提供することを事業の中心にしています。 GoogleやBingに比べれば微々たる規模ですが、ヘイハースト氏は、同社の手法はプライバシーを侵害せず、十分に機能すると考えています。

同氏は、「ユーザーの検索キーワードからはその意図が見えます。 場所と言語設定がわかれば、そのユーザーに関連性の高い広告を配信できるのです」とも述べています。

同氏は、こうした基本的なコンテンツ連動型広告は、まだ始まりに過ぎないと考えています。「機械学習で、検索以外のコンテンツ連動型広告を始められる段階にきています」。

これは、GoogleがTopicsで目指すイメージ、つまり、ユーザーが閲覧するページごとに変化する微妙なコンテキストを理解できる巨大なアルゴリズム広告システムから、それほどかけ離れてはいないといえます。

ヘイハースト氏は次のように語ります。「今後は、コンテンツ連動型広告を行うスタートアップ企業が台頭してくると思います。 もし私が今、新会社を立ち上げるとしたら、パブリッシャー向けのコンテンツ連動型広告を手がけるでしょう」。

未来への構想

皮肉にも、これは1998年に検索を再発明したGoogleのスタンスと似て非なるものです。 モントゥーリ氏がcookieを発明すると、広告主やパブリッシャーは一斉に注目しました。 しかし、それを後押ししたのは、デスクトップとモバイルにまたがって展開するGoogleの業態でした。

モントゥーリ氏がcookieを発明すると、広告主やパブリッシャーは一斉に注目しました。 しかし、それを後押ししたのは、デスクトップとモバイルにまたがって展開するGoogleの業態でした。

ですがそれ以降、ツールは変化しました。 AIが普及したことで、ユーザーのオンライン活動を状況とともに把握する際に、小さな追跡ファイルに代わる新たなツールとして活用が期待されています。

規制当局がGoogleの独占市場に圧力をかけ、Googleにはほとんど対応の余地がありません。 広告大手のGoogleにとって、今は危機的な状況ですが、 他社にとって、これはチャンスを意味するのです。

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