
サステナビリティやESGのメッセージに重要性を感じない場合は、少し外に目を向けてみましょう。 世界気象機関(World Meteorological Association)によると、過去7年間は観測史上、最も気温が高い7年間でした。 NASAも今年の6月は観測史上、最も暑い年と並ぶ気温だったと報告しています。 また、イギリスで開催されたCOP26では、気候変動の緊急事態について120か国のリーダーが大いに頭を悩ませていましたが、その8か月後の7月には、これまで気象学者が2050年までは到達しないだろうと見込んでいたレベルまで、イギリスの気温が上昇しました。
予想を上回る速さで進化しているのは環境問題だけでなく、 社会問題も同様です。 格差が急拡大する中、社会的な混乱が過去に類を見ないレベルで広がっています。
企業は顧客の価値や懸念に対応したいと考えています。 それを念頭に、マーケティング担当者は、今や無視できない環境・社会・ガバナンス(ESG)の懸念を取り除くために、組織がどのような努力をしているかを伝えることが求められています。 しかし現実には、企業の対応が適切なレベルで行われていない場合があり、そうなるとESGの正確なメッセージを伝えるのが難しくなります。
今年の夏に発表されたサステナブルな変革に関する報告書で、Google Cloudは16の市場の企業幹部、約1,500人を対象に調査を行いました。 その結果、回答者の3分の2が、自社のサステナビリティの取り組みには、本当に実行しているのか疑問があるものがいくつかあると答えていることがわかりました。
一部の回答者に至ってはさらに率直な回答をしており、58%は自社が環境問題への対応について虚偽の情報を発信していることに罪悪感を感じていると述べ、29%は自社がサステナビリティを「注目を集めるためのPR活動」としてとらえていることに不満を持っていました。 このように不満を持つ回答者の割合はアメリカではさらに高く、それぞれ72%と35%でした。

変化の時
企業がサステナビリティの責任をきちんと果たしていない場合、マーケティング担当者にできることは限られています。 消費者が賢くなる一方、企業は改善を行わなければ信頼を失うことになります。

PwCは、2021年の『Consumer Intelligence Series Survey on ESG』(ESGに関する消費者インテリジェンスシリーズアンケート)の中で、消費者の83%が企業にESGのベストプラクティスの構築を望んでいると述べています。 また、4分の3以上の回答者が、ESGの価値を支持する企業の製品を選ぶことが多いと答えました。
消費者は、環境問題への対応に関する虚偽の美辞麗句に気づき始めています。 欧州の消費者権利グループ、Euroconsumersは、2021年12月に実施したアンケートで、消費者は製品につけられた環境ラベルを紛らわしいと感じており、54%の人が売り上げを伸ばすためのマーケティング戦略に過ぎないと考えていることを確認しています。 また、環境配慮の主張に対する公的機関の確認を信頼できると回答したのは5分の1未満でした。 サステナビリティについて偽るのは、もはや得策ではないことは明白です。

改善のための6つの方法
マーケティング担当者は、自社の真実のサステナビリティ対策を見つけなければなりません。 そうでなければ、サステナビリティに関する議論に参加し、顧客の懸念に対応することは困難です。
企業がサステナビリティを支援し、マーケティング担当者に役立つ情報を提供するための6つの手順を以下にご紹介します。

目標を設定する
企業と顧客にとって何が重要かを考えましょう。 企業の社会的責任(CSR)戦略では、実行できる明確なESGの目標を提示する必要があります。 まだ設定されていない場合は、今こそ重要課題を検討し、企業と顧客を含む関係者にとって重要なサステナビリティの課題を特定し、数値化すべき時です。
課題は業界により異なります。 たとえば、Googleと同社のライバル企業は、大規模なデータセンターを持ち、大量の電力を消費していることから、二酸化炭素排出量の削減に大きく注力しています。

ロードマップを作る
重要課題の評価を行うと目標を明確化でき、数値化できる現実的な目標を立てることができます。
目標が長期的なものであるほど、どのようにそれを達成するかを定めたロードマップに基づいて実行していくことが必要になります。 ロードマップのマイルストーンも数値化できる必要があり、そこに到達する方法についての明確な情報も必要です。 このような方法をとれば「2030年までにネットゼロ」というような長期的な公約も、単なる先延ばしには見えなくなります。

データを探す
進捗の評価は、業務担当者から得られる該当データを使用して行います。 Googleによると、3割以上の企業がサステナビリティの取り組みを数値化するための測定ツールを持っていると述べているにもかかわらず、実際に測定データを取り組みの最適化のために活用している企業はわずか17%にとどまっているといいます。
データの取得は、業務担当者がデータを提供してくれるかどうかにかかっています。 マーケティング担当者にとって、測定ツール導入のための投資をして、データをきちんと回収するまでの協力関係を築くことが、最も困難な作業かもしれません。


消費者を教育する
データを取得して自社の成果を証明することと、 あまり関心のない消費者に、その内容をきちんと分かってもらうことは別のことです。 自分たちが特定の価値を支持する理由やその方法を消費者に伝えるのは簡単ではありませんが、同業他社との差別化を図る絶好の機会でもあります。 Provenance Frameworkなどもツールとして役立つかもしれません。Provenance Frameworkは、サステナビリティの主張の作成と裏付けに関するオープンソースのガイドで、B Corp認証を取得済みのイギリス企業、Provenanceが提供しています。
また、サステナビリティの取り組みに参加し、その認定を得たり、それに基づく責任を果たしたりすることで、信頼を構築することもできます。 このような取り組みは数多くあり、簡易包装、サステナブルな木材、食料問題、気候問題などその目的も様々です。

弱みを認識する
データにより、対応が不足している特定の領域が見えてくることがあります。 それを認識し、改善に取り組むのは、マーケティング担当者にとって二番目に難しいことかもしれません。 しかし、これは、弱さをあえて示して消費者からの信頼を得る良い機会でもあります。

協力関係を築く
以上のことをすべてマーケティング担当者が一人で行うのは不可能です。 組織内の複数の部門にわたる合意を築く必要があります。 それには有力者の支持が必要です。
すべての手順の中で最も困難なのは、この取り組みを支援してくれる協力関係を構築し、サステナビリティの目標において対応が足りない領域を改善してもらうよう上層部を説得することかもしれません。 Googleのアンケートによると、現在5人に4人が最高幹部にサステナビリティを優先する機会を増やしてほしいと考えています。

多くの企業にとって、信頼性の高いサステナビリティのメッセージを作り、どのように改善を行っているかを証明することは、長く困難な道のりとなります。 しかし、対応を進めていくうちに、見せかけだけ取り繕うというような方法に魅力を感じなくなっていくのは確かです。